いろは白で白であり白でない白といういろ

NEWSのニューアルバム『White』を聴いた。初回盤・通常盤同時予約先着特典のクラッチバッグも無事手に入れることができたのだが、予想していた以上にサイズが大きかったため逆に使い道に迷っている。とりあえず一度袋から出し、眺めて、そっと引き出しの中にしまった。

今後はこの『White』を引っさげてツアーを行うということ、いったいどのような演出がなされるのか、聴きながら想像すると期待で胸が躍る。各種インタビューなどから感じるメンバーの熱量やこだわりも非常に強く、それに応えたい一心で自分も毎日毎日、何度も何度もアルバムを聴いている。今回はその中で感じたことや思ったことなどを述べていきたいと思う。音楽的なことには明るくないから(言い訳)だいたい小学生の読書感想文みたいな文章になってしまうのは仕様。

 

Track.1  MR.WHITE

本アルバムのリード曲であり、KちゃんNEWSやLIVE MONSTERで発売前に披露されていた楽曲。第一印象としては、NEWSのイメージカラーでもある「白」を、やわらかいイメージではなく力強い色として表現していてとても新鮮に感じた。何色にもなれるし何色にもならない、「白」という色のもつ激しさや尖りを改めて考えさせられたと同時に、当たり前のことではあるけれどNEWSはNEWS以外のなにものでもない、という確固たる意志と自信の強さを随所に感じてかっこいいと思った。ダンスに関しては、最初の横並びフォーメーションでしげさんとまっすーさんがセンターであることもまた新鮮だった。「チャンカパーナ」以来、4人横並びといえばコヤシゲでテゴマスを挟む形がテンプレートだったと思うが、そうしたいままでの、特に4人になってからの「縛り」や「典型」にとらわれない挑戦が見られることも、この曲をしてもっとも「男らしい」ものたらしめているのかもしれない。まさに「リード曲」の名にふさわしい、NEWSの新しいカラーを堂々と掲げる一曲だと思う。まっすーさんデザインの衣装がたいへん二次元っぽくて好き。

 

Track.2  KAGUYA

2015年最初にリリースしたシングル曲。メロディー、歌詞、衣装、PV、どれを取っても絢爛な楽曲で、いつ聴いても初めて聴いたときのような、どこか斬新な印象を受ける。音程の上下がそこまで激しくない落ち着いたAメロ・Bメロの次に、いきなり真上から突き落としてくるようなサビが来るあたりも非常に攻めめいている。曲の構成自体はシンプルに感じられる部分もあるけれど、「MR.WHITE」の次に配置されることで一曲だけで聴いたときよりも強いインパクトを与えていて、アルバムの世界に聴き手を引き込むのにうまく作用している。「新しいものをつくる」という観点から2015年NEWSの二作目『White』を語る際、一作目がこの「KAGUYA」であることは絶対に外せない項目だし、KAGUYA→White→ツアーというコンボを綺麗に決めるための一番大事な最初の一手だと思う。ただ、個人的にはキーが高すぎて、カラオケで原キーのまま歌えないのがつらい。そして「MR.WHITE」同様、そこはかとなく漂う二次元っぽい雰囲気にそわそわする元アニオタなのであった。

 

Track.3  NYARO

ワコール後ろ姿キレイブラのCM曲。正直、最初にCMでサビの一部だけを聴いたときは微妙だなと思っていたのだが、1回フルで聴いたらすぐに大好きになった。イントロの少しカントリーっぽいアレンジを聴いた瞬間から真冬でも夏気分になれる、文句なしのアゲ曲。かわいい。すごくかわいい。「渚のお姉サマー」同様「こっち向いてよおねーさん♡」系のラブソングがこんなにもはまるアイドルグループ・NEWSってとってもかわいい。あんなにかっこいいのにこんなにかわいい。「MR.WHITE」「KAGUYA」とかっこいい、男っぽい、攻めた曲できて、3曲目にファンをしてかわいい♡かわいい♡と連呼せしめる曲をもってくる構成が非常にずるいと思う。だけどキライじゃないんだSummer♡ リズミカルな掛け合い部分や、真昼の突き抜けた青空のようなサビから傾いた夕焼けのような大サビへの転調など、1曲の中にたくさん変化があって何度聴いても飽きない。個人的「アルバム『White』音ゲーにしたい部門」第一位。なぜシングルで出してくれなかったのかについては……きっと夏のせいだ。

 

Track.4  SEVEN COLORS

FIFAクラブワールドカップ・モロッコ日本テレビ系テーマソング。タイトル通りのカラフルな曲で、今回のアルバムタイトルが『White』であることを考えると楽曲名からしてちょっと異色な印象の楽曲。白か黒か、というよりも、白も黒もあの色もこの色も!的欲張りキラキラ感がまぶしい。参加各国の国旗の色が組み込まれているというだけでもおもしろいのに、それが歌の中で浮かずに生きているところがさらにおもしろい。個人的に、サッカーソング三部作(?)の中では聴いていて一番「サッカーっておもしろそう!」と思う曲。しかし残念ながらサッカーできない。「NYARO」に続いて明るく楽しい気分になれる、テーマパークで言うところのジェットコースター的花形ポジション。

 

Track.5  Weather NEWS

タイトルにグループ名が組み込まれた楽曲。最初にタイトルが発表された際、なんとなく「ポコポンペコーリャ」系のかわいい路線を想像していたのだが、予想に反してアルバム中もっとも疾走感あふれるさわやかな曲だった。スポーツアニメやバトル系アニメのオープニングにも使えるような、希望に満ちたメロディーと歌詞は元気なときに聴けばさらに元気に、落ち込んだときに聴いたらきっとすぐに元気にしてくれそうな一曲。ただ、雨が曇りになって晴れになるのはわかるけど、その後の>突然のHONEY<にはちょっと動揺した。最後の「Weather NEWS」を歌う小山さんの声が特に印象的で、無声音の「ス」と同時に曲が終わった瞬間の、雨上がりの水たまりに映る水色のような不思議なあたたかさ一抹のさみしさが沁みる。C&Rがとても盛り上がりそうなのでしっかり聴いてちゃんとタイミングを練習しておこうと思う。

 

Track.6  SuperSONIC

コンサートでのダンスパフォーマンスが楽しみになる、鋭いメロディーが印象的な曲。それぞれのパートにおけるメンバーの歌い方も力強く、自信にあふれていて素直にかっこいい。随所に聴こえる電子音としげさんのざらざらした歌声の組み合わせがとりわけ好きで、クールなのに熱い、ホットだけど冷静、そんな相反する魅力を感じる。まっすーさんがメインのラップ部分で一部分だけしげさんが歌う箇所があることも、一瞬で切り込んでいくような鋭さがあっておもしろい。個人的にはこのアルバムの中で一番しげさんの歌声・歌い方が引き立っているなと感じられる楽曲。歌詞にある「閃光」のように、白/黒といった色よりも、黒の中に生まれる一瞬の白、あるいは白の中に見える一点の黒といったひらめきを表現していて、アルバムの中でアクセント的役割を果たす、いうなれば「瞬間の曲」になっていると思う。また、これは個人的な問題だが、歌おうと思ってもサビに入るタイミングが何度聴いてもうまくつかめず、「ス…ス…スーー…パソーニッ」みたくなってしまうのが残念。自分が。

 

Track.7  Black Jack - Inter -

「BYAKUYA」の個性が強すぎるため、流れをうまくつなぐために挿入されたインター曲。『White』の中で唯一タイトルに「Black」を冠しているが、そのイメージ通り、聴き手を重暗い空気でじわじわと包み込んで緊張を最大値まで煽ってから、最後の最後に突き放す。これだけでも十分世界観が確立されていて、続く「BYAKUYA」にバトンを渡すためにけっしてなくてはならない、ある意味ではアルバム中もっとも重要な一曲かもしれない。インター曲だからといって侮れない、たった1分で世界を変えることのできる魔法のような曲。山椒は小粒でもなんとやら。

 

Track.8  BYAKUYA

これまでのNEWSの曲にはない、非常に独特でインパクトの強い楽曲。どこかゴシック小説を思わせるあやしげな歌詞、Sound Horizonような物語性のある構成、洋画ホラーのような不気味さ、すべてを合わせた重厚感があり、一度聴くとなかなか抜け出せない。というより、一度聴いただけでは理解がおよびきれなくて、もう一回、またもう一回、と何度も何度も繰り返さざるをえないほど、「理解」したいと思わせる曲。歌詞とメロディーだけではなくそれぞれの歌割についても、やわらかな声質の小山さんとまっすーさんが先に来て、あとに長く伸ばすしげさんと手越さんの硬めのパートが続くあたりに「導入と発展」の関係性を見いだせる。白夜でありながら極夜のような暗さをも伴って、「Black Jack - Inter -」とともにアルバム『White』の重要なキーとなっていることは間違いない。太陽と月、白と黒、生と死。二つの背反する「なにか」を明確に分断しながら、それでいてそれらの境界を曖昧にする。そうしたところから生まれる薄気味悪さが「BYAKUYA」最大の魅力だと思う。また、曲だけで終わる物語ではなくコンサートでの視覚的演出に続いていく、そういう意味では非常に立体的な曲で、「読む音楽」という言葉がしっくりくる。

 

Track.9  ONE - for the win -

日本テレビFIFAワールドカップテーマソング。 「BYAKUYA」から一転、ファンタジーの世界に飛んでいた意識を現実に引き戻してくれる曲。遠くからだんだん大きくなる歓声が暗い森を抜けてひらけた草原に出てきた気持ちにさせてくれる。「BYAKUYA」のあとに来る曲はこれ以外考えられないと思う理由はこのイントロにあるのかもしれない。「BYAKUYA」が屋内で見る濃密なショーだとしたら、こちらは屋外で派手に騒げるパレードのイメージ。国名羅列歌詞のおもしろとんちきな方向性はキライじゃないんだSummer♡(NEWS「NYARO」歌詞より引用)

 

Track.10  White Love Story

NEWS初のウェディングソング。「MR.WHITE」同様タイトルに「White」が組み込まれているが、反して非常に優しい印象を受ける、やわらかい方の「白」。王子様とお姫様の結婚♡のような地に足のついていないふわふわウェディングよりも、一人の男と一人の女がこれからともに未来を生きていくという現実を実感できる、まさに等身大のウェディングソング。そういえばNEWSってみんなアラサーなんだった、と思うとさらにぐっとくる。綺麗だけれどどこか悲しげなメロディーが自然と身体に染み込んでいくようで、聴いていないときも気づいたら頭の中で流れていて、「BYAKUYA」のようなインパクトはないけれど控えめな魅力が濃い楽曲群の中で逆に際立っている。ウェディング系CMのCMソングにならないかなとひそかに期待しているがどうだろう。個人的な意見として結婚とは妥協であると思っているので特に結婚願望はないのだが、ずっと聴いていると「そうだ、結婚しよう」という気持ちになる。相手はいない。無念。

 

Track.11  愛言葉

10周年記念公演の際に披露された曲。ファン待望の音源化だが、今回収録にあたってタイトルから「~てをひいて~」がなくなっているのが個人的には少し残念に思っている。NEWSのファンになって、彼らと彼らの周りのことを知るたび、NEWSがくれる「愛」のあたたかさを感じるたび、ただ好きになれただけでこんなに幸せにしていただいているのに、これ以上があって良いんだろうか?と怖くなる。そんな「愛」を一番強く感じられるこの曲は、10回聴いたら10回泣く、50回聴いたら50回泣く。もれなく泣く。ずっと大切にしていきたい。そんな曲。まるい歌詞とやさしいメロディーが幸福の形だなあと思うし、その幸福を形づくったのが他でもないNEWSであることは、ファンとしてなによりも誇らしく思う。抱き枕のように抱いて眠りたい。

 

Track.12  ロメオ 2015

以前は錦戸さんと歌っていたという小山さんのソロ曲。そのころのことを知らない身としては、今回の音源化は発表されたときからとても緊張するものだった。 もともとふたりで歌っていた、小山さんにとってもそのころから知っているファンにとっても大切な曲を、どんな気持ちで受け止めればいいのか戸惑いがあったことは事実だけれど、実際に聴いてみるとそうした個人的な心理状態もなにもかも含めて、想像以上に苦しい曲だった。普段から優しい雰囲気の小山さんが嫉妬や恋情を切々と歌うというギャップ。もともと小山さんのイ段の発音が好きだなーと思っていたことも相まって、今回の歌詞の「ジェラシー」の歌い方は特に心に響いた。

 

Track.13  Skye Beautiful

コンサートでは毎回素晴らしいダンスパフォーマンスを見せてくれるまっすーさんのソロ曲。サビがオケというのが新しくて驚いたけれど、きっとここでまた振り切ったパフォーマンスを見せてくれるのだろうと思うと楽しみで胸が躍る。 曲があるからダンスがある、よりも、ダンスのために曲を作るというスタンスがまっすーさんのソロらしく、広大な大空を思わせる壮大なメロディーから、一気に疾走するサビの迷いのなさがかっこよくて美しい。「Skye」はゲール語で「翼」を意味しているらしく*1、それと空という意味のSkyを掛けたのかなと思うととてもおしゃれ。ちなみに「reach for the stars」は「できそうにないことをしようとする」という意味の成句。いま辞書で調べたら出てきた。

 

Track.14  あなた

もっともシンプルで印象に残るタイトルの手越さんソロ。ラジオなどで、編集などはほとんどかけず「丸腰で勝負した」と語っていた手越さん。その通りまっすぐ、ときに揺らぎを見せながらも響く歌声は嘘がない分、より綺麗で、ずっと悲しい。 前回のソロも失恋、別れの曲だったけれどロック調で力強かったのに比べて、メインがピアノ伴奏でシンプルながら、それに負けないぐらいの大きなエネルギーを感じる。それが手越祐也というひとりのアーティストが生み出す、さらけだす表現のなせる技なのだと考えると、そのポテンシャルの高さに改めて驚嘆する。

 

Track.15  ESCORT

台本のト書きからイメージを膨らませたとは思えないほど、「アカデミックでおしゃれ」なしげさんのソロ曲。歌詞もメロディーもちょっと洋楽っぽい雰囲気があって、普通のJ-POPとは違う変わったアプローチの仕方がしげさんらしいなと思った。前回の「Dreamcatcher」同様ファルセットが効果的に使われていて、全体を通して感じる優しい流れがまさに「ESCORT」。ラジオで「エスコート加藤シゲアキっぽい」と語っていたけれど、これを歌うのが加藤シゲアキであることも含め、もっとも「ソロ」であることに意味がある曲だと思う。また、アルバム最後に収録されていることで、変化に富んだアルバムの内容にそっと幕を引くような終わり方になっているのがとても良い。テーマパークで一日中遊んで、夜になって、名残惜しい気持ちもありながらもたくさん満たされて、ちょっと眠たくて、おとうさんが運転してくれる車の後部座席に思わず横たわっちゃうような、あんな感じ。余談だが、今回のツアーで「ESCORTして♡」うちわがたくさん見られるのではないかとひそかににらんでいる。

 

アルバム全体を通して

テーマパークのようなバラエティー豊かな内容にまず驚くとともに、「NEWS」そのものがある種アトラクションとなってエンターテイメントを提供してくれる作品がこのアルバム『White』だと思った。前回のアルバム『NEWS』に勝るとも劣らない完成度で、何度聴いても飽きることなく楽しめることはもちろんだが、NEWSがみずからのイメージカラーである「白」をいま提示してくれることの意味を考えると、この『White』が最高の答えとして存在することは非常に大きい。NEWSが向かう方向を見たとき、「真っ白な世界から始めよう」という確固たる宣言がより生き生きと響いてくるように感じられる。同じ「白」でも表現によってさまざまな性質が生まれるように、NEWSというアイドルグループも、そして彼らが進んでいく先も、きっとさまざまに「白」くあるに違いない。シンプルで、ダイナミックで、複雑で、強くて、優しくて…ひとつの軸がありながら、なににも限定されない未来への堂々たる里程標としてアルバム『White』は機能している。

*1:スコットランド北西部にIsle of Skyeという島があるそう。