いま×(これから+昔)=

『先輩だけど腹が立ちましたよ』

 

2015年8月23日放送●SORASHIGE BOOK

 

・オープニング

今週と来週は定期的に来る少し響く部屋でお送りすることに。「いつも通りやっていきましょう」

〈『アイドルの今、コレカラ』見ました。改めて大野くんと部長との関係性が良いなあと思い、部長の周りには良い先輩がいてよかったと思いました。大野くんがラジオでカサアリを読んでる途中だと話してました〉

「や~~らしいっすね!奇跡ですよ、大野くんが読むなんて」大野くんは義理堅いイメージもあるから頼むと読んでくれたりするのかなとちょっとびっくりした。大野くんがラジオでも言っていたらしいけれど、先日一緒にごはんに行ったんだそう。そのとき『傘をもたない蟻たちは』は3つめまで読んだと直接言ってくれて、どれも褒めてくれたんだそう。本当に偶然だけれど1つめがアーティスト系の話だったので、大野くんは自分に寄せて読むのかと尋ねたら、「なんかでもシゲなんだよね~」と言ってくれてそれも不思議だった。改めて本当に嬉しいし、全部読んでもらえたあとも感想が聞きたい。「それ読んだら『ピンクとグレー』もぜひ読んでほしいなと思うんすけど」

件の飲みではだらだらとお酒を飲みながら語り合っていたんだけれど、その時間自体は10分15分ぐらいで、ほとんど釣りの話だった。部長が躍起になってマグロマグロと言っていたら(「ここで話すのもいやなぐらい頑張ってる、つまりまあ釣れてないんだが」)、釣りの世界は狭いので風の噂で大野くんがマグロを釣ったらしいと耳にしたそう。その釣ったらしい日から3回くらい会っているにもかかわらず大野くんは部長には言わなかったらしく、部長が直接「大野くんもしかしてマグロ釣りました?」と聞いたら「あ、聞いちゃった?シゲには言わないでおこうと思ったんだけど」と。「なんで言わないんすか!」と理由を尋ねると「シゲほら、まだ釣れてないじゃん」と。「これはほんとにね、先輩だけど腹が立ちましたよ、申し訳ないけれど!(笑) なぁんで隠すんすか!」

大野くんいわく、聞かれたら言おうと思っていたらしい。部長は4回マグロを釣りに行って釣れなかった一方で、大野くんは2回で釣れてしまい、しかもマグロ目的で行ったわけではなく、遊びでシイラを釣ろうとしていたんだそう。しかしその日シイラは釣れず、諦め半分でやっていたところにすごい引くものがかかり、サメかと思って揚げたらマグロだったとか。「なんすかその楽しそうなエピソード!」

部長はといえばマグロ釣りに出かけても何もない日ばっかりで、クルージングして終わっている日もあったのでさすが大野くんはもっているなあと、悔しい思いをしつつも驚嘆しきり。大野くんとの関係を「こういう関係もあるんだな」と、釣り・仕事両面でつながっている貴重な関係に感謝しつつ。「今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いしたいなと思う次第でございます」と結んだ。

 

・音楽部

不可思議/wonderboy「Pellicle」

今週はポエトリーラップのアーティスト 不可思議/wonderboy さん。GOMESSさんを聴いた流れでよく一緒に聴いていた。何年か前に話題になってから定期的に聴いていて、シゲ部でかけてないのがびっくりなぐらい好きなアーティスト。谷川俊太郎さんの詩「生きる」を本人許可の元音源化したことで有名で、「生きる」は3.11後の日本人の心に響き一晩で完売したとのこと。

今日紹介する「Pellicle」は一番有名で、痛烈かつ誠実なメッセージ性のある楽曲。日本語ラップはメッセージや魂をのせるとイタくなりがちで、聴いている方が少し照れてしまったりするけれど、その照れを超えるとハートにタッチされたような熱いものを感じる。文字通りすべての言葉がポエトリー、ポエティックで、なのに直接的だからぶつけられる熱さに胸をつかまれる。それに加え、彼が2011年に24歳という若さで事故で急逝されたという背景も聴こえ方を変える。音楽というのは歌う人がどうあれ成立するものであるはずだけれど、亡くなる人が「生きる」を音源化しているということを知るとやはり聴き方が変わってしまう。メッセージに哀愁やせつなさが加わり、生きようという気持ちになる。「シンプルでかっこ悪いかもしれないけれど」

「生きる」は盤では手に入りにくいかもしれないがネットでも見られるのでぜひ見てほしい。

 

・おたより

とりあえず映画の話もたくさん来ていて、観れてないものもあるから全部知っているような口はたたけないけれど、話題になっていたので観に行ったという『野火』。

塚本晋也監督作品ということで話題になっており、彼の作品は海外でもよく賞を受賞したりとすばらしいものが多い。どんな話かというのを説明するのはちょっと難しいけれど、原作は戦争小説で、作者大岡昇平さんのフィリピンでの実体験をもとにしている。同作は死の直前の人間の極致を描いた戦争文学の代表作で、今年は戦後70周年ということもあり戦争映画が公開されている。塚本晋也監督いわく製作に20年を費やしたそうで、自主製作映画ながらヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門に正式出品されており、主演・編集・監督・脚本すべてを塚本晋也さん自身が担当している。「すご…かったね。観とくべき映画っていうか」

良い戦争映画は観ながら「うわあ最悪だ」と思うことがひとつの条件だと思わされる。とにかく観てほしい。まだ観れていない『進撃の巨人』もかなりハードな描写が多いと噂になっているけれどたぶん負けてないと思うぐらい、かなりキツい描写が多いそう。激戦地だったフィリピンのレイテ島で、肺を患った兵士が病院に行けと言われ(「病院も病院として機能してないけど」)、たらい回しにされていくところから物語が始まる。悲惨な状況が画面におさまっているうえで、1時間半の間一瞬も目を離せないし、観終わったあとにかなりダメージを受ける系の映画。部長的にも今年の映画の中ではかなり上位に入れざるをえない。公開規模はそんなに大きくはないけれど、もし機会があったらぜひ観てほしい。

 

「今日ちょっとカルチャー色強いけど、いつも通り。いつも通りか(笑)」

〈高2です。夏休みの宿題夏目漱石の『こころ』を一冊読んでくるというのがあるのですが、読めていません。『こころ』の良さや読むポイントがあれば教えてください〉

記憶が曖昧になっているところもあるので『こころ』の解説は簡単にはできないけれど、無理してでも読んだ方が良い作品。『こころ』はさておき、難しいと思う、読み慣れてない部分があっても無理して読み進めていくとどっかである程度のテンポで読めるようになるので、本を読めない人にはおすすめしているやり方。無理してでも、つらくても眠くてもとにかく読むことが大事。『こころ』については、描かれている感情は複雑だけれどストーリー自体はシンプルで難しくない。部長も三島由紀夫谷崎潤一郎の作品を読んでいたとき、最初はのれなかったりしたもののそれでも頑張って読んでいくと感じる部分が多かった。「馬鹿みたいな感想になっちゃいましたけど(笑)」

いま読書モードに入っていて、猛スピードでいろんな本を読んでいるそう。先日話した中村文則さんの『掏摸(スリ)』もおもしろかった。また、以前振付師さんと話題になった鈴木いづみさんの作品も最近読んでいるとのこと。鈴木いづみさんはもともと女優をされていて作家活動もすごくしていた方だそうで、振付師さんに「読んでみたら?」と勧められて読んでみたらおもしろい。SF作品にも挑戦されているという話を聞き、自分と遠からじな、二足の草鞋でいろんなことをしてなおかつSFも書かれているというところに興味があったので彼女のSF短編を読んだりしている。言葉選びもおもしろく、本の中にマッチさんの名前やジャニーズなどが出てきたり等、時代の切り取られ方も含めて非常におもしろい。

また、アルベール・カミュの『異邦人』にもはまっていて、ページ数はそんなに多くないけれど読み終わったあともずっと考えてしまう、部長的にかなり好きな作品。「頭の中がわりと異邦人…頭の中がわりと異邦人ていうフレーズあれですけど(笑)」

最近おもしろいのをよく読んで刺激を受けている。「読書の夏」を過ごしているのでまたおもしろい作品と出会ったら紹介したいとのこと。「いま並べた作品はどれもドキドキする話なので非常に良いのではないかなと思います」

 

○主観

今日紹介された「Pellicle」、聴きながら涙が止まらなくて焦った。音楽部の音楽で泣いたのって初めてかもしれない。なんだろう、ハートにタッチされたのかな。されたんだろうな。

今日のシゲ部で一番きゅんときた言葉って「時代の切り取られ方」なんだけど、自分でもよくわからないけれどなんかすごく良いなあって思った。小説の中に実在する個人名が出てきたりすることを、「時代を反映する」とかそういうんじゃなくて「切り取られる」って表現するところに妙を感じたし、だから惹かれるし心地良いのかなって、得心いった。他の人から見ればもしかしたらすごくすごく小さいことかもしれないしだから何なんだろうってことなのかもしれないけど、自分の中ですとんって落ち着いてるからそれでいいんだなって思う。そう思えてることが純粋にとても嬉しい。